菖蒲―鹿革に表す武の心―

花の模様は古くから親しまれ、菖蒲模様は祈りや願いを込めた模様として用いられました。「端午の節句」には菖蒲が飾られ、男児の健やかな成長を願います。菖蒲の強い香りは邪気を打ち払うと言われ、束ねた葉を湯に浮かべた「菖蒲湯」に入る風習が残っています。菖蒲の細く伸びた葉の様子は剣に例えられ、魔除けや開運をもたらすとされています。さらに「勝負」「尚武」に音が通じるため、武運を願う武将の鎧や兜に模様として多用されてきました。弘化二年刊の『革究図考』に描かれた菖蒲の模様は、菖蒲を図案化した「竪菖蒲韋」や抽象化した「水菖蒲韋」や「鱗形菖蒲韋」、菖蒲と動物など組み合わせたものまで多種見られ、幕末の日本人が好んだ模様であったことがうかがえます。
鹿革に表された菖蒲模様は、煙で着色する燻技法の他、染色や漆付けの技によって趣の異なる模様となっています。展開する様々な菖蒲模様をご覧ください。
【菖蒲―鹿革に表す武の心― 平成30年3月10日(土)~6月17日(日)】