革羽織(かわばおり)

革羽織は火事の多かった江戸時代に火消が着用したといわれています。江戸後期の風俗について書かれた『守貞謾稿(もりさだまんこう)』には男性の服飾の項に『革羽織之事』とあり、黄色の燻革(ふすべがわ)の革羽織が武家では防火服として着用され、市民には火事場だけでなく冬の防寒着とされていたことが書かれています。以降、明治時代にかけては鳶職(とびしょく)の頭や棟梁(とうりょう)などが着用し、歳の市には革羽織を粋に着飾って出掛けたそうです。また大きな商家では使用人や出入りの職人の晴着用として支給されました。
革羽織は厚い鹿革で出来ており、重量感のある服飾となっています。主に稲藁などの煙によって染色する「燻技法」によって作られ、模様が施されています。革羽織は火の粉をかぶっても燃えにくかったなどの逸話もあり、燻革の難燃性が役立ちました。
素材には「地鹿(じじか)」と呼ばれた大きな革を用いたことから背に継ぎ接ぎは無く、大胆に配された角字や繊細な縞模様といった革羽織特有の装飾に活かされています。

火事装束(かじしょうぞく)
(羽織・頭巾・胸当・袴が一揃)
火事装束には武家と町火消しと二つあり、革製のものは武家で用いられたといわれています。

四方瓜紋燻火事装束
(しほううりもんふすべかじしょうぞく)

打裂羽織(ぶっさきばおり)
武家羽織とも呼ばれ、武士が乗馬などの際に用いた羽織です。背縫いの下半分を縫わずに裂けたままにしています。

桐紋漆付革羽織
(きりもんうるしづけかわばおり)