- 2021年9月13日
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日本には四季の風情を映した模様が多く見られます。古くから農耕を行い、移りゆく季節の変化に敏感な感覚が備わったと考えられます。
小桜や菖蒲の花は鹿革を装飾する模様として代表的な存在です。小桜模様は散り際の潔さといった桜の趣が武士道に重なります。同様に菖蒲模様は疫病や邪気を防ぐいわれや「尚武」「勝負」に音が通じることなどから武運を祈る武士の甲冑の一部に装飾革として多用されました。
蔓の伸び行く様子を描いた唐草模様や穏やかな波が広がる青海波模様は絶え間なく平安な生活が続くようにとの願いが込められています。
菊は「齢草(よわいぐさ)」との異名を持ち、不老長寿を象徴する花として知られています。暑さの和らぐ季節感と相まった菊花の佇まいも好まれ、様々な工芸などの意匠で目にしています。豊穣の季節を迎える喜びは蜻蛉や鹿・月・葡萄などの秋を代表する模様でも感じることが出来ます。
生活を向上させようと心を改める機会でもある新年は、日常の小物の新調といった習慣にも表れています。松竹梅や鳳凰・鶴亀・富士など縁起を担ぐ模様は財布などで顕著に見て取れます。
自然の美しさに心を寄せ、寿福や平安を祈る心は日常の生活の品々に模様として表現されてきました。現代の人々にも通じる想いや感性を鹿革工芸の今昔にてご覧ください。
【印傳の模様 ―季節を愛でる— 令和3年9月13日(月)~11月14日(日)】