印傳の燻-煙が描く色と模様-

印傳の燻―煙が描く色と模様―

燻技法は鹿革に色や模様を施す技法の一つです。太鼓と呼ばれる大型の筒に白革を貼り付け、竈の上部にある穴から出る煙で革を染め上げる技法です。日本では伝統的な染革の手法として奈良時代には行われていました。
材料は主に稲藁が使われます。稲作の盛んな日本において藁は入手しやすい材料であり、炎が出にくく煙が多く出ることが利点でもありました。
色合いは、材料や時間によって微妙に変化します。藁のみによる淡い茶褐色系から回数と時間を重ねると濃い茶色になります。また松脂を用いると鼠色系に染まり、藁と松脂を組み合わせる方法では鶯色に変わります。色調と濃淡を出し分ける技は今も昔も職人の熟練した勘と技術によります。
模様を施すには、「糊置」や「糸掛」があり、独特な技法である糸掛では、白く残る模様を考慮しつつ太鼓に糸を巻き防染し、これにより縞模様や鶉縞模様が表されます。
燻技法によって精緻な模様が施された鹿革は、風合いも優れ武具や甲冑に用いられた後、時代の変化と共に革羽織や革袴、火事装束や身の回りの品等にも多用されました。
現在も印傳屋に継承されている燻技法の様子や、煙によって描かれた色と様々な模様をご覧ください。

平成29年3月11日~平成29年6月11日(この展示は終了しています。)